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闇の箱

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□ 『孕む』 □

『孕む』 09 涙

 女たちは、奉仕の後で疲れ果て、四つんばいになりながらも、あかねの周りに集まり、出産で疲弊している顔やおなかを撫でて労う。小声でおめでとうと、頑張ったねと声をかける。紫織は、あかねを抱きしめ、精一杯の心を込めて、口づけをした。その口の中に、柿崎に放たれた精液の匂いが残っていたことを、紫織は悔やんだが、あかねは黙って受け入れた。紫織の気持ちを。
 
 おめでたい、と素直に言える出産ではない。この場にいる男達のうちの誰かとはいえ、父親も解らない子供である。しかもその父親達は、産まれてきた子を自分の娘とは思っていない。いや、自分の娘であって欲しいと願っているかも知れないが、それは賭の結果がどう出るかということであり、将来、自分の手で奴隷に仕立て上げていく素材が手に入るということであるのだから。
 
 「うっ…うー…うあ…あぁ…」
 あかねは泣いた。痛みに苦しみながら涙が滲んでいたのとは間違いなく違う涙である。今、自分の子供を産み落とし、母親となった感動からこみ上げてくる涙である。そして、我が身と、産まれた子供の身が、どうにも哀しく涙が溢れてきたのである。
 そう。あかねは、黒井によって飼われ、所有される牝奴隷であるのだった。
 
 あかねは、数年前までは、裕福な家庭に育ち、名門と名高い女子校に通っていた。だが、折からの不況が、その運命を一変させた。莫大な借金の返済のために、幼い弟妹たちをはじめ、家族は散り散りとなるところであった。あかねは家族のために、自らの身を売る道を選んだのである。もっとも牝奴隷としての現実は、その時あかねが想像できた範囲を遙かに超えるものであったが。
 
 家族のためと思い、自分自身が選んだことであると、あかねは運命を受け入れていた。黒井は、“黒井の友人”達と比べたら、比較的寛容な主人であったし、気まぐれに見せる優しさは、あかねの胸に仄かな愛情さえも芽生えさせていた。それは調教を経て植え付けられたものかもしれないし、心を守るための女の防衛本能だったかもしれない。だが、そう思うだけで、主人から日々課せられる調教も、粗相によって科せられる罰も、当然の如く受け入れることができるようになってきていた。
 また、辛いばかりではなく、快楽もあった。調教が進むにつれ、あかねの若い肉体は、あかねの意志とは違うところで疼き、快楽を貪欲に求めるようになった。それに戸惑い、抗う時期もあったが、乗り越えてしまってからは楽になった。邪魔な羞恥心や道徳観を、捨て去ってしまえばよかったのだ。
 それには、紫織のような同じ境遇の女たちと出会い、導かれたことも大きいだろう。既に諦めたはずの、人として女としての希望や誇りは、あかねのなかに未だ燻っていた。それを完全に捨て去り、新たなものを心の真ん中に据える術を、あかねは紫織から学んだ。奉仕することで悦びを感じ、被虐の最中にも快感を見出す。そんな牝奴隷たる自分を、あかねは肯定できるようになっていた。
 黒井に所有される牝奴隷である自分は、黒井の意によって生きている。黒井の定めるものがあかねの運命であり、黒井の望むものがあかねの悦びである。あかねはそう思い始めていた。

 その健気な牝の思いを知ってか知らずか、黒井はあかねにさらに過酷な運命を言い渡した。それが、種付けショウである。誰の子供とも解らない子を身籠もるために、多くの男に抱かれる。大勢の前で、主人の目の前で。セックスが、快楽を貪る行為であることには慣れたあかねであった。だがセックスが生殖、自分が子供を産み落とす為の行為であるという現実を、あかねは突きつけられたのだった。
 しかし、好むと否にかかわらず、牝奴隷であるあかねは頷くしかなかった。それを黒井が望んでいる。そう思うことで心の衝撃を和らげ、自らの悦びであると信じようとしていた。過酷な種付けショウを経て、妊娠したときの黒井の喜びようが、その儚い思いを支えてもいた。その子供の処遇を聞き、協議次第では我が子と引き離されるようになることを知っても、それもまた運命であると受け入れていたのである。
 
 だが、実際に娘、自分とは違う新しい命を産み落とし、その産声を聞いたときに、それが間違いだと悟った。自分が牝奴隷という立場であることで、自分の娘までもが、その過酷な運命を生まれながらに背負うことになったことを、あかねは今まさに痛感したのである。未だに縛られたまま身動きが取れず、産湯を使わせてやることも出来ない我が身の情けなさが哀しかった。それよりもなによりも、平凡な幸せを得る機会すら与えられることがないであろう境遇に生まれてしまった我が子の運命が哀しく、産み落としてしまったことを申し訳なく思い、涙が止まらなかった。

 紫織と他の女達も、あかねの気持ちが手に取るように解り、胸が詰まった。もらい泣きで目の前が滲み、涙がこぼれる者もあった。だがただひとり瑠璃だけは、年長の女達の哀しみを理解するには未だ年若すぎ、また外の世界を知らぬ育ちをしていた。しかしこの瑠璃の存在こそ、産まれた子供の行く末を見せつけるものであり、余計に哀しみを誘うものであった。




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Date:2009/06/03
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Thema:官能小説
Janre:アダルト

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