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闇の箱

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□ 『研修』 □

『研修』 05 バックステージ

「お集まりの紳士淑女の皆様、お待たせを致しまして、たいへん申し訳ございません。今宵の宴を、もうまもなく、始めさせていただきます」
 演壇の司会者が、会場に向かって呼びかけているのが、私が待機させられている舞台袖にまで聞こえてきた。
「今宵もまた、素晴らしい品々を取り揃えることができました。皆様にお気に召していただければ、幸いでございます」
 “品々”という言葉に、ずきんと胸が痛んだ。
「お眼鏡に適う品がございましたら、どんどん手をお挙げ下さいませ。より高い値をお付けになり、その財と力を示して下さった方にお買い上げいただくことこそ、奴隷たちの本懐でございます」
 そんなの嘘だ。と耳を塞ぎたかったけれど、完全に違うとは言い切れなかった。私は私を売ったから、今ここにいる。どうせ買われるなら、少しでも高い値段を付けて欲しかった。そうすれば、お父さんと有紀を助けられるのだから。
 私はもう一度、目の前の姿見に映る自分の姿を覗き込んだ。純白のドレスを着せられた自分は、こんな時だけれども、まるでお嫁さんのようだと思った。両の手首に填められた黒光りする革の手枷と、揃いの拵えの首輪さえなければ。
「さて、そろそろ準備が整ったようでございます。今宵初のお目見えとなるのは…」
「行くぞ」
 司会の声を遮って声がかかり、鎖が牽かれた。両の手首を結ぶ短いものと同じ鎖が、私の首輪から延びて、声を発した男の手に収まっていた。
「しっかりアピールして、高く買ってもらえ」
 この一月、私のことを弄び、私の身体をすっかり牝へと作り替えてしまったこの人が、私の付添人もしてくれるらしい。
「はい。…ありがとうございました、ご主人様」
「…もう違う。間違えるな」
 彼は背を向けて、舞台に向けて歩き出した。私は彼に向かって、一礼した。頭が下がり、首輪から伸びる鎖が弛んだのを感じたのだろう、彼は小さく鼻を鳴らした。それだけだった。鎖をもう一度、くいと牽かれ、私は頭を上げて、彼に着いて歩き出した。
 私の鎖を手に納め、舞台から降ろす人は、どんな強さで鎖を牽く人だろうか。私はそんなことを考えながら、光溢れる舞台へと足を踏み入れた。


 今回のオークションに出品される奴隷は、総勢32体を数える。年齢、出身、人種、そして性別もばらばらの者たちが、様々な経緯を経て集められ、この悦楽の宴に供されることとなっている。
 もちろん、どんな人間でもいいというわけではない。売るためには、買い手が必要である。この“会社”、オークションハウスが売れると見込んで仕入れた人間だけが、商品としてカタログに載り、奴隷として舞台に上がるのだ。

 その人間の何を見て商品価値を見出すのか。それはとても一概には言えない。
 もちろん、容姿はある程度の、いや厳然たる基準のひとつではある。思い出の人や好きな女優に似ているなどという個人的な好みはあれど、美醜の基準というのは確かにある。それは人類普遍のものではないにしても、時代、文化、民族毎に確かにある。それをクリアした美貌を持つと見なされた者だけが、仕入れの審査に回ることになる。
 しかし、容姿の基準だけでは差別化ができないことは、芸能界を見れば解るだろう。例えば一人のプロデューサーの好みで集められた、数十人からなるアイドルグループのなかでも人気の格差が出るように。例えば数多ある雑誌の表紙を飾るグラビアアイドルが、泡沫のように淘汰されていくように。可愛いだけ、綺麗なだけで売れるわけではない。
 ましてや奴隷は、文字通り売られる存在である。それを買うのは、女優やアイドルやアナウンサーなど、会おう抱こうと思えばいつでもできる程の富と権力を備えた者ばかりである。そのような者たちに、大金を支払ってまで自分の手元に置きたいと思わせるのは、容易なことではなかった。

 では何が求められるのか。それはもう買い手、主人となる者の好みや性癖次第としか言いようがない。天然のお嬢様や、天性の淫乱症な娘というようなステレオタイプな者ばかりがもてはやされるわけではない。だからオークションハウスは、様々なニーズを捉えた商品を取り揃えなくてはならなくなる。
 だから、時にはこのような、変わり種の商品が出品されることもあった。


「よし。じゃあもう一度おさらいだ」
「はい」
「…はい」
 黒い牧師服を着込み、ロザリオを下げた男が、傍らの少年少女に向けてしゃがみ込み、目線を合わせて言った。よく似た顔立ちをした少年と少女は、緊張の面持ちで頷いた。
 ふたりはようやくランドセルを卒業しようかという年齢であったが、同い年の子供と比べてやや背丈は低めだった。その細い手足と小さな体躯が、およそ不釣り合いな衣装を着込んでいた。少年は純白の三つ揃いを身につけ、胸に花まで挿していた。少女もまた純白の、マーメイドラインのドレスを身に纏い、その小さな頭にはヴェールが被さっていた。そう、婚礼衣装なのである。文字通り十年は早かったが、ふたりにとってこれはごっこ遊びではなかった。ふたりの表情は真剣であった。男にとっては、余興に過ぎなかったが。
「俺がまず出て行って、お前たちのことを会場に紹介する。そんで、俺がこうしたら」
 男は、ふたりが着けている首輪から延びる綱を引っ張った。ふたりは首を引き寄せられ、小さく呻いてたたらを踏んだ。
「お前たちは並んで歩いて来い。怖かったら手をつないでいてもいいぞ。そんで俺の前まで来たら、会場のお客様に向かって一礼、お辞儀するんだ。そしたらふたりで、さっき練習した台詞を言う。さあ言ってみろ」
 男が、ふたりに向かって指を突きつけて促す。
「ほ、本日は…ぼくたち(わたしたち)の、けっこん式に、おこし下さいまして、ありがとうございます。ぼくたち(わたしたち)は、ふたごのきょうだいです。きょうだいですが、ぼくはひなたのことが、(わたしはようちゃんのことが)大好きなので、今日ここで…けっこん式をすることにしました。ぼくたちがけっこんするところを、見守ってください」
 ふたりは声を綺麗に揃えて、卒業式の送辞のように唱和した。

「そうだ。そしたら俺がこう言う。『皆様、若いふたりの決意をお聞きになって下さいましたでしょうか。この熱意にほだされ、僭越ながら私が儀式を務めさせていただきます。さあ、新郎新婦はこちらに』。こちらに、と言ったら、会場に尻を向けて、俺の方を向いて立て」
 男は立ち上がると、意外に長身であった。小柄なふたりは、男の腹までの背丈しかなく、さらに幼く見えた。
「よし。そしたら首輪のリードを外してやる。その次はいよいよ、結婚式の誓いの言葉だ。まず陽介」
 少年の頭に手を置いて、男は言った。
「『汝、陽介は、ひなたを妻とし、病めるときも健やかなるときも喜びのときも悲しみのときも虐げられるときも購われるときも、主の命に従い、主に奉仕し、主がふたりを分かつまで、ひなたと共に生きることを誓いますか』と言う。ちかいますか、と言ったら、『ちかいます』と言うんだ」
「ちかいます」
 少年は顔を真っ赤にして、大きな声で言った。少年は緊張していて、何を言われていたのかよく解っていなかった。そもそも難しいことは解らなかった。陽介は妹と一緒にいたいだけで、それだけでよかった。その誓いの意味は解らない方が幸せであったが、解らないことは不幸でもあった。
 
「よし。じゃあ次はひなただ」
 うつむく少女の顔を上げさせ、ヴェール越しにひなたの目を見つめて男は言った。
「『汝、ひなたは、、病めるときも健やかなるときも喜びのときも悲しみのときも虐げられるときも購われるときも、主の命に従い、主に奉仕し、主の精を受け入れ、主の仔羊を孕み、主がふたりを分かつまで、ともに生きることを誓いますか』。陽介と同じように、『ちかいます』と言うんだ」
「ちかい…ます」
 少女は少し不安げな面持ちをしていた。親戚のお姉さんが結婚したときとなんか違う…。言葉の意味はわからなかったものの、練習のときに感じたおかしさを再び発見して、少女は言い淀んだ。
 しかし、少女に否やはなかった。陽介が素直に返事をしたからだ。双子の兄は、いつもひなたのことを守ってくれた。兄の後ろに隠れていること、兄に追従することが、彼女が十数年の人生で身につけた処世術であった。撲たれる前に謝り、足をさりげなく崩して、綿の下着の白さに目を惹きつけることとともに。
「ん、もうちょっと元気よく言え」
「は、はい…」
 少女はこの男のことが苦手だった。男の低い声は、軽い口調を装いながらも威圧感を禁じ得なかった。それはふたりの家にやって来た何人目かの「おとうさん」にも似て、撲たれた記憶が蘇り、身が竦んだ。この男はひなたを撲つことはなかったが、そのおちんちんは兄のものよりも何人かのおとうさんのよりも大きくて、おまんちょに入れられたときにとても痛かったのを思い出した。

「よし、そしたら俺がこう言う。『ふたりの誓いの言葉は述べられました。ここにいる皆様方が証人です。神の名の下に、ふたりを夫婦と認めます。ふたりが夫婦となる誓いの儀式を、引き続いて皆様には見守っていただきましょう』そんで、俺が肩を叩くから、ふたりとも向かい合え」
 男はふたりを向き合わせる。だが、少年はいざとなると気恥ずかしいのか、微妙に目を逸らしてしまうし、少女はうつむき加減になってしまっていた。
「ほら、照れるな。陽介、お前がひなたのベールを上げてやるんだ。ひなた、顔を上げろ。そしたらちゅーして、いつものように、始めていいからな」
「はい」
「…はい」
 陽介は、ひなたのヴェールを上げてやり、うつむいたままのひなたの顔を下から覗き込むようにして、唇を重ね合わせた。
「ん…ふぅ…」
 陽介が舌を差し込み、唇を割った。ひなたの口の中で舌を探り当てて絡ませると、ひなたから吐息が漏れ始めた。
「んぅ…んふ…むぁ…」
 陽介はここに連れて来られる前から、舌を絡ませる深いキスを知っていた。母親に折檻されて泣き、義父に秘め事を強行されて放心するひなたを慈しみたいという思いが、自然とこうさせた。いつしか少年は、大人の愛情表現を覚えていた。それは妹に与える愛とは違っていたが、それを教え諭す大人はふたりの周りにはいなかった。
 だから陽介は、ひなたの奥から三番目の乳歯がぐらぐらしているのも知っていたし、あまり長くキスを続けると、ひなたの息が続かなくなってしまうこともよく解っていた。
 陽介が唇を合わせながら顔の位置をずらし、ひなたの顔を上向けていく。それと同時にひなたの手袋に包まれたすべすべとした手を握り、胸のあたりまで持ち上げた。
 陽介の右手は、ひなたの左手に指を絡ませて持ち上げ、シルクのドレスに包まれたひなたの胸に触れた。薄いパッドが入っているせいで、膨らみかけのひなたの胸がいつもより大きく思えて、陽介は夢中で胸を揉み始めた。
 ひなたの右手は、陽介の左手に取られて、陽介のジャケットの胸元に差し入れられた。その指先は、ウエストコートの一番上のボタンに触れさせられた。ひなたは唇を吸われ続け、胸を揉まれて、頭がぼうっとなりながらも、陽介の望みの通りにしたいと思った。密着した身体の隙間で指を動かして、ひなたの指は一番上のボタンを外した。
「そこまでだ」
 男が、今にも腰砕けて横になりそうなふたりの頭を掴み、引き剥がした。
「気分を出して、緊張もほぐれたろ。もうすぐだから、続きはあっちでやれ。俺は行くぞ。ここからじゃ俺がしゃべってる声はよく聞こえないと思うが、俺がリードを引っ張ったら、すぐに歩いてこい、いいな」
 男は舞台の方を示して、首輪の綱をもう一度引っ張った。

「さあ、次は今月の目玉商品のひとつ、まだ幼い双子の兄妹の登場です。このふたりの身の上は涙をなくしては語ることはできません。優しい実父を亡くして以来、若い母親は次々と男を引き込むようになり、折檻を受けるようにもなりました。さらに何人かの義父は、母親だけでは飽きたらず、幼い妹にまで手を出すようになりました。そんななかで、双子の兄はずっと妹を守っていこうと決意したのでありました。思春期となり、その決意はやがて愛に変わってゆきました。ふたりは鬼のような父母のいる家を抜け出し、隠れ家で愛を交わすようになりました。義父から受けた仕打ちを清めるかのように、母から受けた傷を癒すかのように、ふたりは互いの傷跡に手を当て、舐め合うようになっていきました。もちろん、そんなことをしていては、兄の半ズボンの前が張り出すのは避けられません。かわいらしくもピンとそそり立った兄のちんぽこが、愛する妹のまんこに吸い込まれていくのは、必然であり、時間の問題でした。そんなふたりの夢は、ふたりでずっと一緒にいられるどこかへ行きたいということでした。ある寒い日、抱き合い暖め合っていたふたりと出会った私どものスタッフは、その願いを叶えてあげることにしたのです。ということで、今回は敢えて、双子の兄妹をセットでの出品でございます。このふたりの夫婦の誓いを認めるのは、ここにおわします皆様であり、ふたりの行く末を左右する神となるのは、ふたりを落札するご主人様でございます。それでは、ふたりの誓いの儀式を見守り、値をつけていただきましょう。さあ、ご紹介いたします…」




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Date:2009/07/13
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Thema:官能小説
Janre:アダルト

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