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闇の箱

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□ 『研修』 □

『研修』 04 トライアウト

「『特殊奉仕業務従事者適性試験』…なにこれ?」
 席に戻ったとき、机の上に置かれていた見慣れた書類。それに添付されていたコピー用紙の束に目が止まり、思わず表紙にあった文言を読み上げてしまった。
「ああ、それ。さっき調達部の方から回ってきたんです。昨日、Aランク候補の検品で使ったものだそうで。正式な結果は後日ですが、柚木さんにも参考として見ておいてくれと」
 隣の席の後輩の男の子が説明してくれた。
「ふーん」
 ぱらぱら捲ってみると、それは心理テストのようなものだった。もう十年ちかく前、就職試験のときによく見た適性検査を思い出した。

Q.128 自分は前向きな方だと思う。
Q.214 目上の人には逆らわない。
Q.469 貞淑な女性を尊敬する。
Q.743 教養を身につけることは必要だ。

「何問あんのよ…これ」
 ざっと見ても、A4の紙束は百枚を超えていた。今までにも同様の試験を見たことはあったが、今回のものは最長だった。
 問題形式は3択で、あてはまる、よくわからない、あてはまらない、のなかから選ぶものだった。回答に時間がかからないものだとはいえ、設問数によってはかなりの時間がかかるだろう。そして、設問が千問を過ぎた頃から、少しずつ性的な設問が混じってきていた。

Q.1247 セックスの仕方を知っている。
Q.1250 星を見るのが好きだ。
Q.1740 クンニリングスの経験がある。
Q.1760 妹のことが可愛い。
Q.1984 好きな人に奉仕することは喜びである。
Q.2276 好きな人に体を許したことがある。
Q.2278 従姉を尊敬している。
Q.2650 妊娠したことがある。
Q.2978 フェラチオとイマラチオの違いがわかる。

 他愛もない質問の合間に、性的な興味や関心、経験の有無を問う問題が次々と挿入されていた。しかも同じ趣旨の質問が何度も執拗に繰り返されていた。
“相変わらず…えげつないやり方ね…”
 柚木は少しだけ眉をひそめて、表紙を見返して、受験者の氏名欄を見た。
“あかねちゃん、か”
 そこには“瀬戸あかね”と端正な字で記されていた。


Q.1357 セックスの仕方を知っている。
“よくわからない”
Q.1559 クンニリングスの経験がある。
“よくわからない”
Q.1754 好きな人に奉仕することは喜びである。
“よくわからない”
Q.2198 アナルセックスの経験がある。
“よくわからない”
Q.2463 フェラチオとイマラチオの違いがわかる。
“よくわからない”
Q.2940 妊娠したことがある。
“いいえ! 何なのよ…いったい…”
 あかねは、次々に繰り出される設問に戸惑いながら、マルを付けていった。
 高校生にもなれば、少しずつ性的な話題は耳に入ってくる。耳年増という言葉は、少女のためにある言葉だった。時折、クラスメイトが買うティーン向けのファッション雑誌を覗けば、いくらでもその手の単語を目にすることはできた。セックスやフェラチオといった単語は、すでに伏せ字にすることもなくなっていたから。
 けれども、幼稚舎からの女子校育ち。温室育ちで初恋の相手にも事欠く身には、縁遠い話としか思えなかった。おおっぴらにその類の単語を口に出できる場に身を置いたことは、あかねにはなかったし、もちろん実践したことがあるわけなかった。
 そんな彼女だから、先ほどからの設問には、戸惑いを隠せなかった。知っているか。と聞かれれば、言葉としては、あるいは耳学問としては知っている。けれども自分の身で経験し、知っているかと言われたら、知らないというのは嘘ではない。そして、知っていることであっても、それをこんな紙の上で認めることはできなかった。それを笑って流すことができず、辱めであると感じるほどに、彼女は初心だった。だから、知っているか。と聞かれて、あてはまるともあてはまらないとも書けずに、よくわからないとマルを付け続けていた。妊娠の有無だけは、即座に否定したけれども。
“いつまで続くんだろう…この問題…”
 訝しがるあかねの耳元では、バイオリンの調べが鳴り響いていた。問題に集中するためにと、試験前に着けられたヘッドフォンから聞こえるリズムに急かされるように、あかねの手は止まらずに動いていた。


 設問は中盤に入って、どんどん過激になっていった。
Q.6394 セックスの夢を見ることがある。 “ある”
Q.7387 セックスに興味がある。 “ある”
Q.7854 心を込めてフェラチオをすれば必ず上手くなる。 “まる”
Q.8176 男性のおちんちんを触ってみたい。 “はい”
Q.8422 あなたは処女である。 “はい”
Q.8590 クンニリングスで気持ちよくされたい。 “はい”
Q.8930 性的に虐められると思うと興奮する。 “はい”
 柚木は、コーヒーを飲みながら、あかねのマルが入った回答用紙のコピーをぱらぱらと捲り続けていた。
“この子、初心そうだけど、素質はありそうね”
 5000番台を超えると、あかねの答えの傾向が変わってきていた。もちろん、知らないものは知らないのだろうが、よくわからないと誤魔化した回答がなくなり、過激な質問にも素直に答えるようになっていた。
 この試験には、時間制限がなかった。長時間に渡る試験は、受験者の手をしびれさせ、膨大な量の単調な設問は、頭をぼうっとさせた。けれども、ヘッドフォンから聞こえる音楽はリズムをつくり、息をつくことも許さなかった。途中休憩もなしに4時間以上も経過した頃には、受験者の疲労は溜まり、理性や集中力は著しく低下する。それが狙いだった。


 この試験は、あかねのように売られてきた人間を、商品として、奴隷として評価するためのものであった。この“会社”が売買する奴隷の多くは、性的玩具としての用途を見定められて購入される。その為に、性的な興味や熟練度、従順さ、調教を受ける素質などについては、詳細な情報と評価が必要だった。
 しかし、ふつうの暮らしをしていた女性に、真っ向から性的な経験の多寡を訊いても、正しい答えが返ってくる訳がない。顔を赤らめ、言葉を濁し、曖昧な返事や偽りの答えしか口にしない女性がいかに多いことか。まして、多感で複雑な思春期の娘や、あかねのような正真正銘の処女のそれを正確に聞き出すことは困難であった。 
 もちろん、手っ取り早い方法はある。検品部屋に監禁して裸に剥き、直接触って感度を確かめ、股を開かせて処女膜や土手焼けを確認し、検査官のペニスを咥えさせてフェラチオのテクニックを実地で確認すればいい。そうすれば、検査とともに、感度や技術の訓練にもつながる。奴隷という立場を受け入れさせ、オークションの際に、高価く買ってもらうためのアピールを身につけさせることもできる。実際、多くの奴隷は、そうした処置がなされていた。奴隷市場といえば、裸かそれに近い格好をした奴隷が一列に並ばされ、客に見定められて値段を付けられて売られていく。そんなイメージが思い浮かぶだろう。そんなシンプルなイメージ通りの扱いをされる奴隷も多かった。けれども、あかねのような“Aランク”の奴隷の候補は、そんな単純な扱われ方をしなかった。


 この“会社”におけるAランクの条件は、まず第一に処女であること。そして性的な経験がまるでないことだった。この基準には首を傾げる人も多いだろう。性的な経験がまるでないということは、つまり全くの素人、それどころか子供でしかないのだから。
  
 確かに、キリスト教の神話の根本にマリアの処女懐胎があるように、世の男性の大半は処女を特別視し、神聖視して珍重する。自分の肉棒が女の処女膜を突き破り、女に破瓜の血を流させることは、征服欲を最高に満足させるからだ。そしてその手垢のついていない躯に精を注ぎ込み、自分の子を宿させることこそ、生き物としての雄の本懐であるからだ。
 しかし、そんな雄としての欲求を除けば、果たして少女はセックスの相手として魅力的だろうか。胸のふくらみも薄く、尻の肉も硬い少女の抱き心地が、そんなにいいものだろうか。体温も高く乳臭い子供に情欲を催し、逸物を昂ぶらせる者がそんなに多いだろうか。弱々しい抵抗しかできない少女を拐かし、意のままにしようとする情けない卑劣漢も世の中にはいる。けれども、奴隷を所有するような男が、そんな卑屈な条件でもって嗜虐の対象を選ぶ必要はないだろう。
 何より少女には、経験によって磨かれた技術がない。セックスがより楽しめるかどうかは、その熟練度に比例する。性感を開発された女性ほど良い声で鳴き、攻め甲斐がある。膣に突き入れた指や肉棒を自在に締め付けることも、媚態を演じる仕草も、一朝一夕では身につかないものだ。咳き込まずにいきり立った肉棒を口の奥まで受け入れ、喉の奥で締め付け舌で裏筋を刺激する。手で優しく睾丸を揉みながら、竿を激しく扱き上げる。それらの技術は、ひとえに経験による。どれほど素質があるといわれても、経験のない少女がそれをできるはずがない。膣を締めつけることも、手や口で奉仕することも満足にはできない。それどころか、無理に咥えさせれば、ペニスを噛まれて痛い思いをすることさえあるだろう。そのどこに価値があるのか。

 また、世の中には、セックスの技術を磨き、それを生業とする者もいる。いわゆる娼婦である。セックスの技術を高めれば、商品価値が高くなるという職業である。それなのになぜ、未経験の処女に、より高い商品価値が見いだされ、ランクAなどという評価が為されるのか。
 そこに、娼婦と奴隷の違いがある。
 娼婦は人間であり、セックスのプロフェッショナルである。熟練したセックス技術を持ち、男に奉仕する技能を身につけた人材なのである。客はその技能を買い、娼婦がその技術を用いて奉仕する機会と時間に金を払う。したがって、その技能が上達すれば、対価も高くなる。
 だが、奴隷は人間ではない。奴隷に購入する者は、たとえその用途が大方を占めるとしても、セックスの技術に大金を叩くわけではなく、その存在すべてを買い取るのである。その容姿も躯も、そして心すらも金で購い、自分に奉仕させるのが目的なのである。そのとき、セックスの巧さなど価値の一部分でしかない。そして奉仕が未熟であったとしても、それはただの個性である。奴隷の飼い主は、それらの個性をすべて勘案して、買い求めるかどうかを判断するのだ。その主人が、セックスについてはアマチュアでいいと判断したならば、それでいいのである。奴隷を買う男達に、そう判断する者が多いのもまた事実である。それは、前に述べたような雄としての本能にも寄って。

 だが、未経験で未成熟な処女がもてはやされる理由は、それだけではない。奴隷を購入する客が何よりも価値を感じ、欲するのは、その未来の可能性なのである。奴隷の飼い主は、奴隷の心得やセックスの知識、技術は、自分の手で、自分の思うがままに授けたい。一度知ってしまったことや、仕込まれたことは、完全に捨て去ることはできない。無知であること、無垢であることは不可逆なのである。余計な経験は、邪魔なだけである。奴隷にとっては付加価値とはならず、かえって商品価値が下がってしまう。ありていな表現をするならば、手垢がついた、ということになる。
それが極限まで少ない者、それが“Aランク”と呼ばれていた。

 手垢というのは、実際の経験だけを指すわけではない。好奇心旺盛な少女たちが、耳だけ年増になって仕入れた知識も、そのひとつである。
 そして、手垢を観察するための観察や試験によってさえも、対象となる奴隷には余計な知識がつく可能性がある。具体的に言うなら、セックスをしたことがあるか、と問うことは、セックスについて知らせてしまうことになるということである。量子論の観察者問題、観察すること自体が観察対象に影響を及ぼすという論を持ち出すまでもなく、ちょっと考えれば自ずとわかる。これがあかねに特別な試験が課された理由である。
 無知で無垢な可能性が高い娘を、そのままの状態と商品価値を保って出荷したい。その為には、入荷する前から、なるべく干渉を最小限に留めてたい。その為のペーパーテストである。しかも、性的な問いについては、膨大で単調な設問と、低調な音楽のもとで、なかば催眠状態に陥らせ、理性を極限まで失わせてから回答させるという念の入れようであった。

 そのような配慮を受けて、あかねは奴隷としての適性を試されていた。試験問題の表紙に記された『特殊奉仕業務従事者』というのも、その為のまやかしである。あかね自身は、奴隷になるという認識すらないままに試験を受け、売られる為の準備に取り組んでいるのだった。


 一万を超える設問の回答を流し読みして、柚木は紙束を書類の山の上に積んだ。
“これならAでいいんじゃないかしら”
 あかねの回答結果の正確な分析は、コンピュータによって数日後に弾き出される。しかし柚木は、あかねはAランクに値すると直観していた。何でかと言われてもうまく答えられない、勘としか言いようがなかった。柚木のこの職場での十年近い経験は、筆圧やマルの書き方といった事柄から、商品のことを正確に察することができるようになっていた。
 そんな柚木をはじめとする何人かの合議によって、来週にもあかねの評価額は決まるだろう。仲介した某金融機関との間で金額の折り合いが付けば、一ヶ月以内にあかねは入荷される。
 それまでに、あかねの商品価値を上げるためのプログラムを組み、あかねを出品するオークションの回を決定すること。それが、商品管理部の柚木の仕事であった。




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Date:2009/07/02
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Thema:官能小説
Janre:アダルト

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